■【主張】東シナ海調査 中国の海にしてはならぬ(産経・社説)
http://www.sankei.co.jp/news/editoria.htm
政府は東シナ海の日中中間線の日本側海域での海底資源を探査するため調査船を出航させた。同中間線の境界付近で中国は天然ガス田の採掘施設を増強しており、日本が自らの権益を守るための行動に乗り出したのは、遅きに失する感は否めないものの、評価したい。
これに先立ち中国外務省の沈国放次官補は阿南惟茂大使を呼び、日本側の調査を「一方的な決定」と懸念を表明した。同省報道官は日本側に慎重な行動を求めた。きわめて遺憾である。
一方的に採掘を進めているのは中国だ。日中間で重なり合う東シナ海の排他的経済水域(EEZ)は画定されていない。互いの海岸線から中間線をひく日本の主張に対し、中国は大陸棚が終わる地点としているからだ。国連海洋法条約は、双方に対し、境界画定を妨げることをせず、合意の努力を求めているが、中国は守っていない。
中国の「春暁ガス田」は、海底で日本側に広がっている可能性があり、日本側海域の天然ガスや石油をそれこそ一方的に吸い取られかねない。中川昭一経済産業相、川口順子外相はこの懸念を伝え、データの提供を求めたが、中国側は一切示していない。
今回の日本側の調査は、これまでの地震波を使った物理探査と違い、海底の地質構造を立体的に把握できる探査能力を持つ調査船を用いる。資源の有無が初めて確認できる。中川経産相は「試掘調査も視野に入れる」と説明しており、日本の権益を守り抜く姿勢をみせている。こうした探査が過去実施できなかったのは、中国への過度の配慮があったからだ。
日本は海洋法条約を尊重し、中国を刺激しないようにと、日本側海域におけるわが国石油会社の試掘ですら、三十一年間認めてこなかった。
一方、中国は将来のエネルギー需要を見越して、戦略的に着々と海洋資源の確保に動いてきた。日本が自らの権益を確保する戦略を持たなかったがためにつけ込まれたといえる。
自民党の「海洋権益に関するワーキングチーム」は先月まとめた提言で、「海洋権益関係閣僚会議」と担当相を設置して、海洋・エネルギー戦略を総合的に立案・実施するよう求めた。
東シナ海を「中国の海」にしない国家戦略を構築するときである。
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